オフィスビルの原状回復の範囲と費用相場
2026/02/172026/02/17
オフィス移転で必ず出てくるのが「原状回復」です。
ここでつまずくと、想定外の追加請求につながることもあります。
この記事では、オフィスビルの原状回復について「原状回復の範囲」「費用相場」「費用を抑える方法」を、実務目線でまとめます。
1. オフィスビルの原状回復の範囲
1-1. そもそも「原状回復」とは
原状回復は、「契約で定めた状態に戻して返すこと」です。
ただし重要なのは、原状回復の“正解”は一つではなく、契約書(特約)・ビルオーナーや管理会社の意向で決まる点です。
原状回復をめぐる考え方(通常損耗・経年劣化の扱い、トラブル予防の考え方)は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で整理されています。
住宅の場合は「経年劣化はオーナー負担」という考え方が主流ですが、オフィスビル(事業用物件)の場合はこのガイドラインが原則適用されないため、契約条項と特約の確認が最重要になります。
1-2. 原状回復の“3つの戻し方”パターン(オフィスで多い)
オフィスの退去では、だいたい次のどれかに分類されます。
A)居抜き返却(オーナー了承が前提)
造作・設備を残して次のテナントに引き継ぐ方法です。
成立すれば最安になりやすい一方、「ビル側がOK」「次の借主(後継テナント)が確定」など条件が厳しく、交渉要素が多くなります。
B)原状回復(契約で定めた状態)
契約で求められる範囲まで復旧して返却する、最も一般的なパターンです。
パーテーション撤去、増設配線撤去、サイン撤去、OAフロア補修、タイルカーペットの部分貼替などが該当します。
C)スケルトン返却(内装・設備をほぼ全撤去して“箱”に戻す)
内装をほぼ撤去し、コンクリ躯体に近い状態に戻して返却します。オフィスでも契約でスケルトン指定がある場合があり、費用が大きく振れやすいのが特徴です(設備量・搬出条件・夜間指定などで上振れ)。
1-3. 「どこまで戻す?」のチェックリスト(範囲を確定する順番)
原状回復の範囲は、思い込みで決めると高確率で揉めます。次の順で確定させるのが安全です。
- 賃貸借契約書・特約(原状回復条項、指定業者、スケルトン条件、工事時間帯など)
- 工事区分(管理会社・オーナーの指定業者以外でも大丈夫か)
- ビル管理規約(搬出経路、養生、作業時間、警備員手配、申請書類)
- 現地立会いで「撤去対象リスト化」(管理会社・オーナーと合意)
※「立会いで合意した撤去対象を、メール等で残す」だけで、後の追加請求リスクが下がります。
弊社では一番わかりにくい「どの範囲まで原状回復をすればよいか」を、お客様と一緒に不動産会社や管理会社と交渉・確認までサポートしております。
1-4. オフィス原状回復で“よくある工事項目”とお見積り事例
(撤去)
- パーテーション、造作壁
- 受付カウンター、造作家具
- 看板・サイン、ガラスシート
- 追加した照明、スポット、非常灯の移設分
- 追加した配線、LAN、電話、配線ラック
- 追加した空調(増設分)、換気扇
- キッチン・給湯室の増設分 など
(復旧)
- 壁・天井の補修(穴埋め、下地補修、塗装・クロス等)
- 床(タイルカーペット貼替、OAフロア補修、巾木交換)
- 天井(ボード補修、設備跡の塞ぎ)
- 原状の照明配置に戻す、スイッチ・コンセントの戻し
(共用部対応)
- 搬出の養生、エレベーター養生
- 廃材搬出・処分、産廃マニフェスト対応
- 作業時間の制限(夜間・休日)対応
お見積り事例(愛知県名古屋市内のオフィスビルの夜間工事)
| 区分 | 工事内容 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 | 備考/特記事項 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 内装解体工事 | カウンター、デスク等什器撤去、木材撤去 | 1 | 式 | 35,000 | 35,000 | |
| 間仕切り撤去 | 351 | ㎡ | 1,800 | 631,800 | パーテーション含む/2重壁 | |
| 発生材集積・小運搬費) | 56 | ㎥ | 14,000 | 784,000 | ||
| 労務費 夜間割増25% | 1 | 式 | 362,700 | 362,700 | ||
| 諸経費8% | 1 | 式 | 145,080 | 145,080 | ||
| 廃材搬出(搬出費) | 2 | 人工 | 25,000 | 50,000 | ||
| 廃材搬出(諸経費) | 1 | 式 | 5,000 | 5,000 | 車・P代 | |
| 調整値引き | -3,580 | |||||
| 内装解体工事 合計 | 2,010,000 | |||||
2. オフィスビルの原状回復の費用相場
2-1. まず結論:相場は「坪単価(㎡単価)」で見る(ただし幅が大きい)
オフィス原状回復の費用は、返却条件や内装・設備量によって大きく変わります。目安として坪単価で「3万〜10万円/坪(約9,000円〜約30,000円/㎡)」のように幅広いレンジが提示されることがあります。
幅が出る主因はこの5つです。
- 返却条件(原状回復か、スケルトンか)
- 造作・設備の量(特に空調・電気・OA床)
- 搬出条件(搬出経路・EV制限・養生範囲)
- 作業時間(夜間・休日指定)
- 産業廃棄物の種類と量(処分費)
2-2. 規模別の目安
以下は「概算を掴む」ための目安です(必ず現地見積りで確定してください)。
- 小規模(〜30坪(約100㎡):坪単価は低め〜中程度になりやすい。概算:約90万〜300万円
- 中規模(〜60坪(約200㎡):標準的なレンジに収まりやすい。概算:約180万〜600万円
- 大規模(60坪(約200㎡)〜):安全管理・工程の関係で単価が上がることも 約180万円〜
2-4. 追加費用が出やすい“ポイント”
お見積もりの上振れ要因として特に多いのは次です。
- 夜間・休日作業指定(割増)
- 共用部養生が大きい(長距離養生、EV複数台、養生材の指定)
- 搬出制限が厳しい(台車禁止、手運び、時間窓が短い)
- 空調・冷媒(フロン)回収が必要
- アスベスト調査・除去(該当すれば別次元で上がる)
- ビル指定業者縛り(相見積りが効きにくい)
3. オフィスビルの原状回復の費用を抑える方法
3-1. 契約と返却条件の“再確認”でムダ工事を消す
一番安くなるのは、値切ることより 「やらなくていい工事をやらない」 ことです。
- 契約書・特約で「どこまで戻すか」が明文化されているか確認
- 原状回復/部分解体/スケルトンで費用は大きく変わる
3-2. 立会いで「撤去対象リスト」を確定し、書面(メール)で残す
工事を安くする最大の敵は「後出し追加」です。
管理会社・ビル側と現地を見て、以下をリスト化し、メールで合意しておきましょう。
- 撤去するもの
- 残して良いもの
- 仕上げの基準(全面貼替か部分補修か)
これだけで追加請求の確率が下がります。
3-3. 相見積りは“同条件”で(最低2〜3社)
相見積りは鉄板ですが、やり方を間違えると比較できません。次を揃えて同条件で依頼します。
- 図面(平面図・天井伏図があれば尚良い)
- 撤去対象リスト
- 作業時間(夜間/休日)
- 養生範囲
- 産業廃棄物処分費の含み(マニフェスト含むか)
これを揃えて初めて「価格の差」が見えるようになります。
3-4. 「部分補修」か「全面貼替」かを交渉する
床(タイルカーペット)や壁は、オーナー側が「全部貼替」と言いがちですが、状態次第で部分補修で足りるケースもあります。
- 汚損の範囲が限定的
- 同型番の材料がまだ入手できる
- 目立たない貼り分けが可能
写真と現地確認で詰めると費用が落ちやすいです。
3-5. “居抜き”を狙えるなら、最優先で検討
オーナーが許せば、居抜きは強力です。
- 次の借主(後継テナント)が内装を活用できる
- オーナー側も空室期間短縮になる
- 退去側は撤去費用が最も抑えられる
ただし、成立条件が厳しいため「条件が合えば採用」くらいが現実的です。
3-6. 追加費用を防ぐ「工事ルール確認」チェック
安く抑えるというより、上振れを防ぐための必須項目です。
- 搬出経路・EV使用ルール
- 養生の仕様(範囲・材質・復旧)
- 作業可能時間帯
- 事前申請(何日前まで?)
- 騒音作業の制限
- 産業廃棄物の出し方(搬出回数制限など)
ここを落とすと、夜間割増や人件費増で一気に上がります。
4. 見積書を見抜く:最低限ここだけ確認
お見積りが出てきたら、次を見れば“高い/安い”より先に“妥当か”が分かります。
- 一式が多すぎないか(できれば㎡/台/本など数量明記)
- 養生費(範囲が妥当か、床のみか?周囲への掛け養生まで含むのか?)
- 産業廃棄物処分費(何を・どれだけ捨てるのか?何㎥、何tなど品目と量が書かれているか)
- 諸経費(8〜20%程度)
- 夜間割増(必要か、回避できないか)
5. 退去までのおすすめ段取り
- 工事可能期間を管理会社に確認
- 契約書・特約・ビル規則を読み、返却条件を把握
- 現地立会い→撤去対象リスト確定(メールで証跡)
- 同条件で2〜3社相見積り
- 工程表と申請書類を提出(管理会社承認)
- 工事→立ち合い確認→明け渡し
6. まとめ
- 原状回復の範囲は原則、契約(特約)で定めた状態だがビルオーナーや管理会社の意向で決まることもある
- 費用相場は坪単価(平米単価)で大きく振れ、3万〜10万円/坪(=約9,000〜30,000円/㎡)など幅が出る
- 安くする最短ルートは ムダ工事を消す(範囲確定)こと
- 余裕を持ったスケジュールで組む事が重要となります
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